外国人には難易度が高い?インドでバスを利用する際の注意点
遺跡や聖地など観光資源が豊富なインドには、そのエキゾチックな魅力も相まって、世界中から多くのバックパッカーが訪れます。
その一方で、インドの交通インフラはまだ発展途上にあり、目的地にたどり着くにはどの交通手段を使うべきか、悩む人も多いと思います。
今回は、主に都市間移動の際に選択肢となるインドのバス事情について紹介します。
インドのバスの種類
インドのバスは、運行主体で見ると、州政府系公社が運行するものと民間企業が運行するものの2種類に分かれます。
公営バスには、近距離バスと中・長距離バスがあり、料金が非常に安く設備が古いという特徴があります。
その一方で、民営バスは、都市間移動など中・長距離のものが中心で、料金がやや高く、州政府系公社のバスに比べると設備が整っているという特徴があります。
具体的には、民営だと路線や便によっては、ボルボやスカニアといった外資系メーカーのエアコン付き寝台バスなどを選ぶことができます。
公営だと、エアコンなしで窓が全開のローカル感が強いバスが中心になります。
発着時刻と乗降場所の確認方法
バスの発着時刻・場所は、redBusというバスの予約サイトや、州の道路交通公社のウェブサイトで確認することができます。
redBusでは、国際クレジットカードで決済ができるので、日本からでもバスを予約することができます。
redBusは、当日に車両ナンバーなどをSMSで通知してくれるため、便利です。
道路交通公社(州によって名称が異なります)は、各州にありますが、例えば、ベンガルールのあるカルナタカ州のKSRTC(カルナタカ州道路交通公社)では、以下のようなウェブサイトを開設しています。
チケットの購入方法
バスのチケットを購入する方法は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、redBusや州政府系公社のウェブサイトを通じ、あらかじめ予約・購入しておく方法です。
この場合、乗車予定のバスに空席がないといった事態を防げるだけでなく、あらかじめチケットを入手できているので気持ちに余裕を持てるというメリットがありますが、行程が変更になってキャンセルすることになっても返金されない可能性が高いというデメリットがあります。
2つ目は、旅行会社に手配を依頼する方法です。
インドの旅行会社は玉石混交なので、ガイドブックなどで紹介されているところや、googleの評価・口コミが良いところをあらかじめ探しておくことをおすすめします。宿泊先のホテルにあるトラベルデスクや、宿から紹介してもらった旅行会社も比較的信頼できると思います。
良い担当者に当たれば自分が考えていたプラン以上のものを提案してくれることと、1つ目の方法と同様に気持ちに余裕を持てるというメリットがありますが、手数料を取られるので若干割高になってしまうことがデメリットです。
3つ目は、乗車後に車内で購入する方法です。
近距離バスなどでは、乗車後に車内で車掌に行き先を告げてチケットを買います(北インドの州では窓口で買うように言われるところもあります)。
この場合のメリットは、予約をしていないので急に行き先を変更したくなってもキャンセルする必要がないことです。一方、デメリットは、乗客の多い路線では空席がないことがあり、席が空くまでずっと立ちっぱなしになるリスクがあることです。
ちなみに、バススタンドに着いてバスのドアが開くと、降車が終わる前に人々が乗車しようとするため、外国人が席の奪い合いで勝つのはほぼ不可能です。
このほか、発着するバススタンドが大きいところであれば、チケットの予約カウンターがある場合があるので、直接窓口で購入することもできます。
注意点
バスの乗車前から降車までの注意点は、以下のとおりです。
同じ町にバススタンドが複数ある
バススタンドは、1つの町に1つしかないという訳ではありません。町によっては、近距離と中長距離というように、行き先によってバススタンドが2、3ヵ所あるところもあります。
一概には言えませんが、たいていの中長距離バスは、町でメインとなるバススタンド(「セントラルバススタンド」のような名称が多い)発着となっているように思います。
「自分が乗車するバスは旧市街のバススタンドから出る」と考えていたものの、実際は新市街に発着していたということもあり得ますので、事前に確認しておくことをおすすめします。
もし不安であれば、どのバススタンドに行くべきか宿の人に聞いておくのも良いと思います。
乗り場がわかりづらい
インドのバス乗り場は、行き先表示が現地語で書かれているところや、そもそも表示や案内がないこともあり、見つけるのが大変です。
大きなバススタンドであれば、総合案内のカウンターやチケットの予約カウンターがあるので、どの番号のホームからバスが出発するか、そこでまず確認することをおすすめします。
加えて、教えてもらった番号のホームに着いた後は、制服を着た職員を見つけ、自分が乗るバスの乗り場が合っているか確認します。ここで話し掛けておくことによって、ホームの近くにいれば自分が乗るバスが来たら教えてくれるようになります。
民営バスの乗り場は、チケット購入時に自分で指定することになるので、自分でその場所をあらかじめ確認しておきます。
乗り場はバススタンドではなく、幹線道路沿いの小さなバス停だったりするので、同じバスに乗る人を見つけておくのが良いと思います。
インドの人たちは、聞かれたことがわからなくても「わからない」とは言わず、何となくで教えてくれてそれが間違っているということが多いので、必ず複数人に確認しておく必要があります。
時間どおりに来ない
これはバスに限った話ではありませんが、インドの公共交通機関はだいたい時間どおりに来ません。バスの場合、渋滞、非効率なオペレーション、天候、その他トラブルなどが、その主な原因だと考えられます。
バスは遅れることの方が圧倒的に多いですが、まれに予定時刻より早く出発することがあるので注意が必要です。
かなり待つことになるかもしれませんが、予約をしていなければ出発予定時刻の1時間前、予約をしていても30分前には、バススタンドまたはバス停に到着するようにした方が無難です。
停車が一瞬のことも
乗降者が少ないバス停などでは、ほんの一瞬だけ停車して、次のバス停に向かうことがあります。
乗車予定のバスを逃さないように、職員や同じバスに乗る人に「バスが来たら教えてほしい」と伝えておき、発車予定時刻が近づいてきたら、周囲をよく見ておくようにしましょう。
バスが来ても案内役の職員が地声で行き先を連呼するだけで、英語でのアナウンスはもちろんありません。
自分が座るはずの席に誰かが座っている
オンラインでチケットを予約する場合、あらかじめ座席を指定することができます。そして、苦労してバスを見つけてようやく乗車しても、自分が座るはずの席に別の人が座っていることが多々あります。そういう時は、予約票やチケットを見せて、速やかに移動してもらいましょう。
たまに席の交換を頼まれますが、嫌であれば応じる必要はありません。
なお、この現象は、バスに限らずフライトや鉄道でも頻繁に起こります。
車掌に英語が通じない
公営バスでは、乗車後車掌が車内で料金を回収にまわってきます。予約済みの場合は、自分がすでに支払いを終えていることを伝える必要があります。
しかし、車掌には英語が通じないため、近くの英語が喋れる乗客に助けてもらうか、予約票やチケットを見せて確認してもらう必要があります。これらをオフライン環境下でも提示できるよう、あらかじめ準備しておきましょう。
民営バスは予約が前提になっているので、名前を伝え予約票を車掌に見せたら、後は自分の席を探すだけです。
古い車体と硬い座席
公営バスの車体は古く、乗客を輸送することに特化した最低限の設備しか備えていません。座席や床面は硬く、サスペンション機能が皆無であるため、路面から突き上げるような揺れが体に直接伝わってきます。
つまり、乗っていて疲れがたまる構造になっています。
また、スマートフォンを床に落とすと、画面が割れてしまうことがあるので、置き場所や管理には十分注意してください。
なお、公営バスでも一部では、ボルボ製の車両(ベンガルール~マイソール間など)が導入されていて、これらはインドメーカーの古い車体に比べ、乗っていて快適です。
民営バスの車両は、総じて公営バスに比べて良いように思いますが、路面のコンディションについてはどうすることもできないため、通る道によっては、寝台で横になっていると、身体が宙に浮くことがあります。
トイレ休憩
中長距離のバスに乗っていると、路線にもよりますが、食事時などのタイミングでトイレ(チャイ)休憩を挟みます。
トイレはローカル感の強いものであることが多いため、利用するのに抵抗がある人は、乗っている間に水分をとり過ぎないようにした方が良いかもしれません。
休憩所には、似たようなバスが複数停車していることもあるので、自分のバスがわからなくならないように、特徴やナンバーなどを覚えておきましょう。
概ね10~20分程度したら乗客や運転手が戻り始め、乗客1人1人の確認などせず、クラクションだけ鳴らしてゆっくりと出発するので、置いて行かれないように気をつけてください。
また、休憩ではない途中のバススタンドでの停車は、すぐに出発してしまうので、車外に出る時は車掌か運転手に一声掛けておきましょう。
休憩中に席を離れる場合、貴重品の管理には十分注意してください。
降りる場所がわかりづらい
目的地が終点でない限り、降車予定の場所はわかりづらいことが多いです。
タイミングを逃さず降りるためには、車掌や周りの乗客に降りるバス停を伝えておくこと、目的地が近づいて来たらオフラインマップで現在地をこまめに確認することをおすすめします。
特に寝台バスで早朝に降りる時は注意が必要です。
もし降車予定のバス停を乗り過ごしてしまったら、すぐに車掌に伝えて降ろしてもらうか、目的地まで戻るのに便利な場所で降ろしてもらうようにしましょう。
交通事故
インド旅行で最も怖いのは、お腹を壊すことや感染症にかかることよりも、実は交通事故だと考えています。
2018年のインドの交通死亡者数は15万人強で、日本の約43倍となっています。交通事故件数も約46万件と非常に多いです。
実際に、僕がアーメダバードからブージに移動していた時も、道中で車両の前方から軽い衝撃と鈍い音が伝わった後、バスが急に停車することがありました。
何事かと思って外に出てみると、どうやら牛を轢いてしまったらしく、フロントバンパーが破損していました(牛は数十メートル後方で即死していました)。牛はヒンドゥー教で神の使いとして大切にされているため、ヒンドゥー教至上主義の人たちが多い地域だとトラブルになっていた可能性が高いです。
衝突の原因は、おそらく前方不注意か運転手がウトウトしていたかのどちらかだと考えていますが、見通しの良い道路での出来事だったので、その後目的地に着くまで安心できませんでした。
交通事故に関しては、乗客からすると防ぎようがありませんが、リスクを認識した上でご利用ください。
まとめ
ここまで、インドのバスや種類の特徴から、バスを利用する際の注意点などについて説明してきました。
これを読むと、バスを使うのは難易度が高いと思う人もいるかもしれませんが、バスは他の交通手段と比べて料金が安いだけでなく、利用することで人々の生活を身近に感じられたり、美しい車窓に出会えることもあります。
良い面も悪い面もありますが、これらの内容を事前にしっかり確認しておけば、利用時の難易度は下がると思います。
それでは良い旅を!